2011年6月アーカイブ
「ニューヨーク.トンプキンス広場の想ひで」
トンプキンス広場が晴れた日は、人がいっぱいだった。
トンプキンス広場はイーストヴィレッジのはずれ、
アルファベット・シティにある。
緑の樹と、緑のベンチと、
小さな水飲み場のほかにはなんにもない。
可愛いチューリップの花も、
きれいなバラの花も咲いていない。
ブランコも滑り台も噴水もない。
でも鳩や犬がいて、毎日のろのろ時間が流れていた。
いくつも並んだベンチは干からびた鳩の糞が
ぺちゃっと白くこびりついていたけれど、
誰でもすわったり寝そべったりできて、
私はベンチが好きだった。
ベンチが緑色なのも、好きだった。
トンプキンス広場で彼らに会ったのは、
7月の、暑い、暑い、とろけてしまいそうな夏の初めだった。
1989年のこと。
もう遠い日の想い出となってしまったけど、
いまもときどき彼らのことをおもいだす。
2007年5月、平安画廊で念願の個展。
15年もかかってしまった。
木版画にしようと思い版木に木炭で下絵を画いていたが、
いつのまにか、「版画」から「板画」に。